子育てママのためのリビングラボ
「わたし」に戻れるサードプレイスのデザイン

ママたちのココちいいをカタチにしてみたらプロジェクト
株式会社KDDI総合研究所

家事や育児などの時間を優先して、自分のための時間をなかなか確保できないママたち。そんな子育て中の女性が自分らしさを発揮できる「サードプレイス」をデザインしようと発足したのが、KDDI総合研究所による「ママたちのココちいいをカタチにしてみたらプロジェクト」です。「サードプレイス」とは、家でも会社でもない、心地のよい第3の居場所のこと。 プライベートな時間と役割のある時間、その両方の時間がちょうどよいバランスで保たれ、子育て中の女性たちが自分らしさを発揮できる場所とはどんなスペースでしょうか? 「人々が自分自身の生活(ライフ)の課題に気づき、解決(デザイン)してゆく社会」という同研究所が考える未来に向けて、地域のママたちとの共創による「リビングラボ」として取りくみました。

たまプラーザに位置するWISE Living Labを拠点に、2017年から活動がスタート。リサーチやワークショップを繰り返しながら丁寧にアイデアを検討し、2019年にプロトタイプ「シェア冷蔵庫」の実証実験に至りました。ACTANTは、共創メソッドを活用した独自のワークショッププログラムを設計し、プロジェクトを推進。また、webサイトや展示など、関連するコミュニケーションツール全般のデザインを手がけました。

Category
CommunityLifestyleLiving lab
Site/Year
Yokohama, Kanagawa / 2017-2019
Services
リビングラボ / 共創 / 建築
Team
ISKW design office(建築)

Approach

すべてのプロセスを地域のママたちとともに

リビングラボとは、地域に暮らす人々を、デザイナーやエンジニアとは異なる視点をもった「生活の専門家」と捉えて、ともに価値を創りだしていく枠組みです。本プロジェクトでは、アイデア発想からデザイン、プロトタイピング、評価といった一連のプロセスを、すべて地域のママたちとともに進めました。単なるモニターとしてではなく、サービス開発のコラボレーターとして対等にデザインに参加いただくことで、この地域に根ざした、ママたちにとってリアリティのあるアイデアを掘りさげることができました。

Details

活動のカタチをつくる

初期のリサーチフェーズでは、先行研究にもとづきリビングラボを活用したサービス開発手法を検討、プレワークショップでの仮説検証などをおこないました。まとまった時間の取りづらい主婦たちと共創を進めていくために、継続的に参加するコアメンバーでの「集中ワークショップ」と、誰でも参加できるオープンな「立ち寄りワークショップ」を交互に織り込んだプログラムを設計。集約した機会を通じて、ママたちの考えや評価を広く掬いあげ、よりアイデアの密度を高められるしくみとしました。

アイデアのカタチを探る

リビングラボでは、デザインからプロトタイピング、評価に至る一連のサイクルを、すべてママたちとともに進めます。また、建築家やデザイナーも参画し、プロフェッショナルな技法を導入することでプロジェクトのクオリティアップに寄与しました。例えば「シリアスプレイ」というレゴを活用したワークショップでは、言葉にできない感性をカタチとして表現し、ママたちとデザイナーの間の共通言語を取りだしました。どのステークホルダーもお互い尊重し合いながら共創を進めることが可能になります。

カタチをブラッシュアップする

検討したさまざまなアイデアは、建築家の協力のもと3つの「カタチ」に集約されました。3つのサードプレイスアイデアを3Dプリンターで成型し、誰でもその場で参加できる「立ち寄りワークショップ」の一環として、併設されたカフェにてアイデアプロトタイプの展示をおこないました。カフェに訪れた周辺住民の方々にコメントを書いていただくことで、いわば投票システムのようなフィードバックを得ることができます。地域住民の評価を吸収しながら、しくみやアイデアのさらなるブラッシュアップを図りました。プロセス毎に情報を公開することで、実装の段階に入った際、地域住民の理解を促す役割も果たします。

Result

食のシェアで心地いい場所をつくる、コミュニティ冷蔵庫

一連のリビングラボプロセスを経て、プロトタイピングするアイデアを「シェア冷蔵庫」に決定。コミュニティ共有の冷蔵庫を介して、作りすぎたおかずや家で余っている食材をシェアしたり、そこから自由に持ち帰ることもできるという、食品や料理の交換を支援するサービスです。サービス化にむけた実証実験を通じて、忙しいママたちの家事の時短につながるだけでなく、食に対する好奇心を刺激したり、新たな地域のつながりを生み出す場=サードプレイスとしての効果があることが示されました。また、グループチャットによる利用者間のコミュニケーションや食べ物を交換する際の安全安心マニュアルも、サービスの活性化に大きな役割を果たしました。

Point

  • 地域住民が参画し実証実験まで並走するリビングラボメソッドの導入
  • さまざまなステークホルダーが共通認識を持つことを可能にする、感性をベースにしたワークショップを設計
  • リアルとデジタルのコミュニケーション機会を複合的に組み合わせたサービスデザインの実現

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