OPEN LIVING LAB DAYS 2016 に参加しました #04

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OPEN LIVING LAB DAYS 2016 に参加しました #04


本ブログ『OPEN LIVING LAB DAYS 2016 に参加しました』シリーズでは、これまで4日に渡って開催されたリビングラボカンファレンスの前半2日間をレポートしてまいりましたが、今回は後半に行われた様々なワークショッププログラムについてその様子をお伝えします。

カンファレンス3日目終日と4日目の午前中で1人5コマまで参加できるスケジュールになっていましたが、用意されたワークショップの数はなんと22ほど。事前にワークショップの詳細はあまり開示されていなかったので、タイトルで判断し、自分の受けたいワークショップを申し込みます。

私は、
– Empowering End-users-From Factors to Actors
– Structuring User Research in Living Lab project: the LLAVA workshop
– Milieux Institute Open House
– Value creation and Living Labs : Users’Takin’ care of business
– Into my world
という5つのワークショップに参加しましたので、その様子を順に紹介していきたいと思います。

 

Workshop#01: Empowering End-users-From Factors to Actors

スウェーデンでヒューマンセントリックICT開発をメインに活動しているBotnia Living Labが主催のワークショップでは、インターネット上のFacebookなどを利用したSNSでの個人情報をどのように守り、そして利用していくかというテーマのワークショップ。同リビングラボで開発されたユーザー自身が情報提供の制限が設定できるデジタルツールが紹介され、実際にそのツールを使ってみようというものでした。

実はこちらのプラグインアプリがまだ開発段階でワークショップ内ではあまりうまく動作せず最終的なツールのアウトカム自体はわからなかったのですが、この場で実験しながらフィードバックを今後の開発に活かしていくということがリビングラボらなでは?のプログラムと思うと納得でした。

ワークショップのイントロダクションの様子

 

Workshop#02: Structuring User Research in Living Lab project: the LLAVA workshop

2つ目のワークショップは、iMindsで実際に使用されているメソッド&ツールを使用しながら、リサーチ段階のプロジェクトを次のステージに進めるためにどの部分のリサーチが不足し、または必要とされているかという要点を整理するプロセスを試してみるものでした。まず、実際のワークを行う前に、iMindsで定められているプロジェクトのフレームワークとそのプロセスのプレゼンテーションが行われ、プロジェクト初期段階の探索と実験を繰り返すフェーズで使用されるツールの一つとして今回のワークショップが紹介されました。

iMindsのプロジェクトフレームワークについてのプレゼンの様子

iMindsのメソッドを試すに当たり、実際のプロジェクトをケーススタディとするため各テーブルからボランティアで実践しているプロジェクトについて1分程度のピッチを行いました。私も、ACTANT内部で検討中だったプロジェクトの一つをケースとしてプレゼンさせてもらいました!ピッチが終わった後は、各テーブルでワークに入ります。

本ワークショップは、⑴拡散フェーズと⑵評価フェーズに分かれており、まず⑴拡散フェーズとして、プロジェクトオーナー(プレゼンを行った人物で、私のテーブルは私がオーナーになりました。)が4つに分けられたカテゴリーに関して、どれくらいのリサーチが出来ているかを10段階で自己評価します。4つのカテゴリーは、’Need’(プロジェクト/ユーザーにとって必要なものは何か)’Innovation’(プロジェクトにおいて、なにが革新的なのか)’Barriers to Adopt’(プロジェクト実現においての障壁は何か)’Current Practices’(似たようなサービスやプロダクトは何か)に分けられています。

次に、他の参加者と対話しながら、そのプロジェクトにおける4つのカテゴリーについて、リサーチからのインサイトをカードに記入していきます。記入は、オーナーが自分で記入したり、他のメンバーがプレゼンを聞いた上で質問し、リサーチインサイトを受けて考えうることなどを客観的に記入することも可能です。例えば、私はスーパーの半調理食材についてのプロジェクトについて話したのですが(実際に弊社で行っていたプロジェクトから少し変更しています。)、Barriers to adoptでは、アレルギー問題や、容器、価格、環境問題など、様々な意見がでました。

ワークショップ内で4つのカテゴリーに対してのコメントを記入している様子

4つのカテゴリーでカードが出揃った段階で、次のステップである⑵評価フェーズでは、カテゴリーごとに情報をグルーピングし優先順位をつけ、カードに記入された内容が事実であるものにはシールを貼ります。そして、各カテゴリーの中から1番このプロジェクトに必要なリサーチ分野だと思われるカードを一つづつ選び、コマを置きます。最後に、選んだカードから4つのリサーチクエスチョンを導き出し、それがこのワークショップの最終的なアウトカムとなります。

ワークを経て、プロジェクトに今までなかった視点が足されたり、確かにここの部分はあまりリサーチせずに進んでいたかも、と気づかされることがあり大変勉強になりました。特に、最後のリサーチクエスチョンを選定する前に、事実のみにシールを貼る行為によって、客観的な情報と主観的な情報が区別され、より今後必要なリサーチエリアがはっきりしたように思います。iMindsの現場では、本ワークショップをチームメンバーだけで行ったり、他のステークホルダーと行うこともあるようです。クライアントと共に本プロセスを行うことで、プロジェクトの方向をより具体的に進めるための合意形成を目的としたワークショップとしても活用できそうだなぁと思いました。

 

Workshop#03: Milieux Institute Open House

お昼休憩の後は、実際にモントリオールで活動しているリビングラボを見学できると聞いたので参加したこのワークショップ。しかし歩きながら話を聞いていると、なんとショッピングモールにそのラボはあるらしく、聞き間違いかな…?と思っていると、本当にショッピングモールに着きました…!何をやるのか全く把握していない状態で受付をすると、2ドルコインとブリーフペーパーが渡されチームごとに分けられました。そして、私のいたチームはなぜかゴーグルを手渡されました…?

受付で手渡されたゴーグル

実はこのリビングラボがショッピングモールの中にある意味というのは、ショッピングモールの中の問題をリビングラボとして改善していく目的のために活動しているからなのです。The mall as living lab として活動する本主体は、3つの専門エリアの異なる大学、ショッピングモール、行政で構成されています。プロジェクトを行うときは、ショッピングモール内でリサーチや実験を行い、モールの上層階にある会議室でディスカッションを行っているようで、既にショッピングモール内のサインを改善した実績もあるとのことでした。

今回私が参加したワークショップでは、「身体の不自由な人々にとって、モール内のどんなところが不自由(課題)でどう改善する必要があるのか」を見つけるフェーズと、アイデアを出すというワークフェーズの2部構成になっていました。まず課題発見のフェーズでは、チームの中に普段から車椅子や盲導犬を必要とする障がい者がパートナーとして加わりながら、受付で配布されたゴーグルやカートなどを使い実際に自分で体験しながら課題発見を行います。私のチームに配られたゴーグルは、レンズにガウスがかかっており視界がほとんど見えない状態になっていました。ミッションは、『そのゴーグルをかけ、ショッピングモール内のフードコートへ行き、渡された2ドルで水を買い、席を見つけて座り、水を飲み、ゴミ箱に捨てる。』というもので、一見簡単に思えるこの動作なのですがゴーグルをかけると文字や形を判別するのが難しく、聴覚と触覚に頼りながらの体験を通していろいろな発見がありました。

ゴーグルの中からカメラで撮影したイメージ。(色はなんとなくわかるのですが、ほとんど見えません。)

チームメンバが実際にミッションを実践している様子

リサーチを経た後、会議室に移動し、リサーチのまとめとアイデアのブレインストーミングを行いました。それを各グループごとに発表し、午後のワークショップは終了しました。

ユーザーになりきって演じるというアクションリサーチを実際の舞台で行うことは簡単そうに見えてなかなか実行に移すのが難しいと思いますが、このラボではプロジェクトメンバーとオーナーシップがうまく噛み合って廻っているなぁという印象でした。また、”リビングラボ”と聞くと実際に場所が常設してあり、そこで活動できるようになっている、というイメージが強かったのですが、ラボとしての箱がなくてもテーマがしっかりと設定され、それがリアルな場とも結びついていれば箱は必要ないのだ、ということが今回の大きな気づきでした。

 

Workshop#04: Value creation and Living Labs : Users’Takin’ care of business

カンファレンス最終日のワークショップ1つ目は、これからリビングラボを設立したいと考えている企業に対して、どのようにリビングラボを理解してもらい、どのようなリビングラボをつくって行くべきかを考えるプロセスを体験するワークでした。各テーブル4,5名の中に、1名の実際のビジネスオーナーが入り、ワークショップオーガナイザーから各テーブルに投げかけられる質問に対しビジネスオーナー以外の参加者が答えて行きます。質問のレベルは様々で、『リビングラボとは?』というものから『リビングラボに必要なものは何?』『リビングラボを他の事業に例えると何?』などいろいろ。その答えの中からTOP5を選び各テーブルごとに発表することで、リビングラボに対する様々な角度からの意見を吸収し、ビジネスオーナーたちが何が重要かまとめていきます。

最後の5分間で、各テーブルのビジネスオーナー達が自分たちのリビングラボを作ると仮定したPRポスターを作成し、発表して終了しました。ポスターは模造紙に手書きというすごくラフなものでしたが、最終的に何かのアウトプットに落とし込むという作業が入ることで、リビングラボに対する理解度が向上したように思います。制作物のレベルとは関係なく、手を動かすことでワークの達成感や満足度が高いものになったとも思います。

チーム内で質問に対する回答を検討している様子

 

Workshop#05: Into my world

WeLL Wallonia e-health Living Lab主催の最後のワークショップは、様々な視覚障害で起こる身体状態を体験した上で、ペルソナとジャーニーマップをつくり、どのようなソリューションが必要かを考えるワークでした。視覚障害の体験は様々で、ショッピングモールのリビングラボで使用したゴーグルなどを使用し、視界を制御しながらまっすぐな線の上を歩いたり、ペットボトルの蓋を開けコップに移し飲むという体験や、鏡を見ながら文字や図形を描くなどの体験をしました。外から見ていると簡単そうに見えるこれらのワークですが、ペアの人に指示をしてもらいながら挑戦してもかなり難しかったです。

ペアになり、視覚障害の体験をしている様子

実際にこれらの体験をした後、渡されたペルソナの基本情報に肉付けをすることで人物像をより具体的にしていきます。そして、作成したペルソナ像の体験を7つほどのステップでジャーニーに起こします。私たちのグループは、”後天的に視力を失った30代の女性がティンダーで出会った男性と初めてのデートで食事にいく体験”を考えました。一見ちょっとふざけた設定には見えますが、細かくペルソナと状況を設定したおかげで、「レストランに行く道を事前に調べないといけない。」のような普通に考えただけで出てきそうな課題だけではなく、「アプリ上の写真情報しか相手の顔に関する手がかりがないため、薄暗いレストランでは初めて会う男性の顔が判別できない。」などの具体的な課題を抽出することができました。こうして考えたジャーニーの中から、ペルソナが最も困難に感じ改善が必要だと思われるシーンをそれぞれ選び、その課題に対するアイデアを議論しました。

設定したペルソナのジャーニーの7つのステップから課題を抽出する様子

こちらのリビングラボは、以前同じワークショップを大学生、エンジニア、デザイナーの混合チームで3日間のプログラムとして行い、ソリューションとなる製品やサービスのプロトタイプまで開発していたので、今回はそのプロトタイプの評価も行いました。私たちが体験したプロトタイプは、盲目のユーザーが歩いていて前方に障壁を感じると手に持っているボタンがその位置に応じて左右に振動するというものでした。まだ実用化までは遠いと感じましたが、実際のリビングラボプロジェクトでリーンにプロトタイプ開発まで進めながらここまで活動している推進力に大変驚かされました。

 

カンファレンスクロージング

午後はカンファレンスのクロージングとして、もう一度リビングラボの軌跡を振り返り、さらに未来への展望についてのスピーチや初日に行われたNetworking and OpenLL JAMで出た意見をパネルディスカッション形式で発表したりと終始盛りだくさんで行われました。最後に主催のENoLL代表Dr.Tuija氏と、開催地Québec州からも挨拶があり、来年はヨーロッパのどこかでの開催になるからまたそこで会いましょう!という風に和やかに閉会しました。

実際にリビングラボのカンファレンスに参加してみて、日本でリビングラボについて調べたり、話を聞いているだけでは分からなかったこと、知らなかったことがたくさんあったというのがまず大きな発見でした。リビングラボと言っても、形やテーマは本当に様々で、このブログだけでは紹介しきれないほど面白い発見や活動がありました。今年開催されるOPEN LIVING LAB DAYS 2017はポーランドのクラクフ(Kraków)で開催される予定です。日本でもじわじわと認知され始め、実際に幾つかの場所でオープンしつつあるリビングラボですが、これからリビングラボを取り入れてみたいという行政や企業の方は、是非一度本カンファレンスに参加してみることをお勧めいたします。ACTANTでも、リビングラボの知見がたまってまいりましたので、ご相談はいつでも受け付けております!(木村恵美理)