Service Design Global Conference 2018

Service Design Global Conference 2018


今年で11回目を迎えるService Design Global Conference 2018。今回の開催地は、ギネスビールのふるさとダブリンでした。ACTANTからは武山教授が全日程に参加し、帰国後のACTANT FRIDAYで、さっそく今年の動向をメンバーと共有しました。こちらのブログでも、その主なトピックをお伝えしたいと思います!
 

10/10 – Members Day

ゲストにThe Interaction Design Association (IxDA)会長のAlok Nandi氏が登壇し、“Design Configurations and Narratives”というテーマでスピーチ。昨年、Montreal Design Declarationという宣言がなされ、社会課題に対してデザインのアプローチを積極的に応用していくことを提言しているそうです。また、これからのデザインのテーマとなるキーワードが挙げられていましたが、それらに共通して、急速なスピードで進化していくテクノロジーの重要性が指摘されていました。
 

10/11 – DAY 1

アイルランドの民族舞踊のパフォーマンスで始まったメインイベント1日目。Mayo ClinicのイノベーションラボからFjordに戻ったLorna Ross氏の“New kids on the block: How technology is reshaping design and rewriting designers”と題されたKeynoteでは、マクロな歴史的視点から「これからのデザインとは何か」が語られました。サービスデザインが複雑化するなかで、バックヤードの組織やシステムなど、ユーザーのエクスペリエンス以外の部分が拡大していること。そしてステークホルダーマップも「ギガマッピング」と呼ばれるように、マッピングすべき範囲が広がっていること。このことから、システムデザインとサービスデザインを接続していく必要があると指摘していました。とくに強調されていたのは、AI同士や機械同士のインタラクションが起こるこれからの時代、ロボットやプログラムもステークホルダーのひとつとして扱っていかなくてはいけないという点です。そこで重要になるのが、AIと人間の連携やコ・クリエーション。医師とAIの分析を突き合わせると、どちらか一方だけによる診断よりも正答率が一挙に上がるというデータもあるそうです。こうしたテクノロジーとの関係で、Trust, Privacy, Truth, Security, Identityといったキーワードが、これからの新しいテリトリーを形成していくという見通しを示していました。
 

こちらは“Delivering a Service Design Mindset”という、BMWのイノベーション・マネージャーによるプレゼンテーション。とくに製造業に従事する企業のなかで、どうやってデザインのマインドセットを導入していくかというケーススタディでした。イノベーションワークショップのようなデザインスキルを導入しながら、そのスキルを使った実プロジェクトとしてBMWの新しいインタラクティブなサービスの開発を並行して実施していったそうです。スキル導入の研修プログラムで面白かったのは、5日間のあいだデザインシンキングのプロセスをループで行い、どの工程からでも参加できるというフレキシブルな形式でした。フルセットを何回もやって学んでいく人もいれば、リサーチだけに参加することもできるようで、リサーチについては、エキスパートユーザーインタビューとネット上のエスノグラフィー、カスタマーアドバイザリーボードなどをきちんと仕組みとして整えているとのこと。このように何年か時間をかけて徐々にサービスデザインのアプローチを組織の中にスケールしていく際に大事なのは、マインドセットとメソドロジーの両輪なのだと強調していました。

このほか、働き方の未来をテーマにした “Humanizing the Future of Work”では、どうやって従業員の才能を引き出していくかが語られました。「働く」ことのパラダイムシフトが、いま日本だけでなく世界的に起こっているのだということを改めて実感する講演でした。
 

10/12 – DAY 2

メインイベント2日目最初の“Servicing A Sea Change”と題されたKeynoteは、Virginグループが2020年にスタートする新しい豪華客船ビジネス、Virgin Voyagesについて。業界に風穴を開けるような革新性を目指して、乗組員を中心とするコンセプトを構築したという発表でした。乗組員にマニュアル的な指導はせずに、その人の個性が生かされるようなパフォーマンスを重視していて、リクルーティングに力を入れているそうです。また、伝統的に男性社会だった船の世界において、船長や操縦のエンジニアリング部分にも女性を積極的に起用し、これまでの世界観を打ち破ろうとしていました。このコンセプトがどのように実現されていくのか、これからが気になるところです。
 

“Unchartered territory of strategic design”というプレゼンでは、何年かかけてフィンランドの銀行組織のなかに、個別のプロジェクトから戦略的な経営レベルに至るまでデザインを浸透させていったステップを紹介していました。現在は、デザインシンキングを学んだマネージャークラスの人が、企業全体の方向をデザインしていくレベルまで到達したそうです。このプログラムを組織全体で習慣にして、色々なトピックを通じてデザインのカルチャーを社内全体に広めていく取り組みがなされているとのこと。プレゼンターの方自身はデザインエキスパートですが、いまはコーチとして、組織全体のデザインスキルを上げていく役割を果たしているそうです。
 

こちらはAdobeの事例で、組織内コラボレーションを通じてイノベーションを加速する仕組みを社内に導入する専任マネージャーの方による“The Slow Hunch – Cultivating Customer Centric Acceleration through Collaboration”というプレゼンです。Hivelabのプログラムを使って、チームづくり、スペースづくり、メソドロジーづくりが仕組み化されています。組織を横断したコラボレーションに、空間も含めて取り組んでいる。そのような専属のポストを設けていることがすごいですね。
 

行動デザイン系のテーマでは、“Bolstering Design implementation with Behavioral Science”というプレゼンがありました。NYのがんセンター内のラボで、サービスデザイナーと行動科学者がコラボレーションをし、がん患者のケアの成功度を上げる取り組みです。ダブルダイヤモンドを経て出てきた施策の効果を上げるために、ステークホルダーと実際に現場で発生しうるバリアを抜き出し、行動科学の知見を応用してサービスを仕上げていくという方法でした。コミュニケーションのデザインを変えてから予防接種の接種率が高まったそうです。緊急時の呼び出し用ベルのデザインなども、細かなところまでプロトタイピングをして効果を検証していました。
 

続いて、今年のアワードの受賞プロジェクトから。こちらはHellonというフィンランドのエージェンシーによるスーパーマーケットのデザインです。小さな子ども連れの親子に向けて、スーパーで起こるストレスを解消しながら買い物をサポートするというもの。10のアイデアをプロトタイピングして施策を導入し、実際に売上にも繋がったという、インパクトがしっかり数字として裏付けられたプロジェクトでした。
 

面白かったのが、Fjordによる警察のプロジェクト。どんなカテゴリの事件が通報され、それをどのように処理し、最終的に解決したかという筋道をデータで解析し、その結果から通報に最適なインターフェースをデザインしたものでした。
 

こちらは、Continuumによる空港のナビゲーションデザイン。搭乗ゲートまでの行き方に迷ったり、出発時間に遅れてしまったりというトラブル要素に対して、グラフィックのアプローチから一つひとつ改善を図ったプロジェクトです。ラボで制作されたプロトタイプはなんと1/1スケール。サイネージのシステムも作り直しています。とくに、空港の環境にあるノイズを再現して、そのなかでも人が適切に動けるかどうか検証していたところが面白かったです。

最後のKeynoteは、今年出版されたThis is service design doingという書籍の編集プロセスについてでした。色々なサービスデザイナーがグローバルにコラボレーションした一大プロジェクトによる本で、一つひとつのトピックについて、制作に関わったサービスデザイナーたちのビデオ解説を映した発表でした。
 

おわりに──今年の傾向

いくつかの発表のなかでも言及されていましたが、通底するテーマとして感じたのは「テクノロジーと人間の関係」でした。AIやロボットなどのテクノロジーが急速に現場に入ってきているこの時代に、サービスデザインはどう対応していくのか。最新のTouchpointが“Designing the Future”と題して、まさにその特集をしています。複雑なのは、AIのアルゴリズムからはじき出された結果がなぜそうなったのか、人間には必ずしも理解できないということ。AIと人間の語る言語にずれがあるなかで、どう対話しコラボレーションしていけるかという指摘もなされています。
それから、サービスデザインの扱う対象が複雑になってきているという話題もありました。システムデザインのアプローチと結びつけていかないと、人間理解だけではカバーしきれないところがある。そこでサービスデザイナーには、コラボレーションによって色々な人の知見を束ねていくファシリテーションが求められるのだと思います。また、デザインシンキングが広まり、さまざまなツールも一通り行き渡ったいま、サービスデザイナー自身からは、ツールやメソドロジーにこだわらずアイデンティティを築いていこうという風向きが感じられました。

以上、今年のService Design Global Conferenceのハイライトでした。動画も今後Youtubeに公開予定とあるので、ご興味のある方はチェックしてみてください!
https://www.youtube.com/user/servicedesignnetwork/playlists