IASDR2017カンファレンスでポスター発表

IASDR2017カンファレンスでポスター発表


10月31日から11月3日にかけて、オハイオのシンシナティ大学で開催された「IASDR」というデザインリサーチ系の学会にて、代表の南部がポスター発表をおこなってきました。愛知淑徳大学の宮田雅子さんと名古屋芸術大学の水内智英さんとの共同研究の一環です。
そこで試みたのは、ブルーノ・ラトゥールの「ノンモダン」という視座をベースに、アクターネットワークセオリーをデザイン手法へと援用することでした。具体的には、東京郊外の前近代的な山岳信仰の実践を分析し、それが現在のニュータウンのコミュニティと比較してどのような構造になっているかを、開発中のデザイン手法を用いて抽出しました。近代/前近代コミュニティという二項対立で描くのではなく、状況に合わせて様相が変わる可変的なネットワークとしてのコミュニティ形成のあり様を可視化しました。



シンシナティ大学。キャンパスにアメフトのスタジオがあります。アメリカンです。画面にはDesignの文字が。



IASDR 2017

この学会への参加は今回が初めてでしたが、そもそもは2005年に韓国を中心としたアジア圏で創設され、その後、欧米圏の研究者が加わり国際化していった経緯があるようです。新しいデザインの潮流というのは欧米から発信されることが多いですが、それを逆流するような面白い場になっています。
「デザインリサーチの枠組みを再度考える」というテーマでおこなわれた今回のカンファレンスは、オーソドックスなユーザーリサーチから、スペキュラティブデザインまで多岐にわたる発表がありました。注目を集めていたのはAI・GENARATIVE系のデザイン、SPECURATIVE・FUTURE DESIGN系のデザインメソッド、CO-CREATION系のデザインに関する発表でした。他の参加者とコミュニケーションを図るにはちょうどよい、こぢんまりとした規模の学会だったので、さまざまな対話、フィードバックを得て帰国することができました。


Dread & Desire:
 Urban Futures at the Scale of the Human Body

特に今後のACTANTの業務に参考になりそうだったのは、シンシナティ大学のMatt Wizinsky先生主催のフューチャーデザインに関するワークショップでした。先端技術と未来のシナリオをかけ合わせながらWhat ifなプロダクトをデザインするというスペキュラティブデザインの基本的なプロセスでしたが、未来のシナリオを描く際、ユートピアとディストピアに分け、そこに加えて「ミドルトピア」という3つ目のカテゴリーを設定して検討する点が、現実的かつアメリカ的な印象を受けました。僕の知っているこれまでの未来洞察ワークショップでは、良い側面だけを描くことが多かったように思います。しかし、法制度や政治、技術、文化など重層的な視点から、対立する要素も含めて繰り返し検討し、それでも進めてみようというシナリオに至ることが、受容性の高いデザインに辿り着くための重要な思考プロセスだと思います。ミドルトピアという立ち位置は、もしかしたら日本の中庸的な発想につながるかも、といったいろいろな想像が広がり、発展可能性のある重要なヒントとなりました。



Live Well Collaborative

カンファレンスのツアーに参加し、大学の近隣にあるリビングラボ的な建物も見学しました。
Live Wellはシンシナティ大学とP&Gが共同設立したノンプロフィットな団体です。主に産学協同プロジェクトのマネジメントとディレクションをおこなう学外の中立的な組織として機能しています。運営モデルの詳細を聞いたところ、大学と企業がLive Wellに資金を入れて、Live Wellがプロジェクト運営の主体として活動しながら、リサーチやデザインに携わる学生にはしっかりと賃金が支払われるという仕組みになっているようです。これは、多くの産学協同プロジェクトにおいて、そのプロセスや成果物のクオリティが疎かになりがちな印象のある日本の研究状況にとっても参考になり得る形態だと思いました。利潤追求のための短期的な視野に陥ることは良くありませんが、このモデルであれば学生が企業の収益に責任を持つ必要はないため、作業に対してのフィーが発生することは一概に悪いこととは言えません。それどころか、教員はマネジメント業に勤しむ必要がなくなり、企業もしっかりとしたフィードバックが得られる上手な仕組みだと思います。日本で実践されている多くの住民参加型のプロジェクトやワークショップにおいても、ボランタリーに参加者を募るのではなく、責任の所在を明確にしつつ、関係者それぞれにメリットが生まれる運営モデルがあると、様々な場でより効果的な成果が上がるように思います。



Future of Sonder

地下のロフトスペースには、Future of Sonderという空間もありました。Sonderという架空の街の未来のヘルスケアに関するペルソナや社会状況が順に示され、最後にアイディエーションとリフレクションの場があるという、まるで空間全体が共創デザインツールであるような展示でした。来場者はこの展示をトレースしていくことで、自然に未来の街に住む貧困や移住問題を抱える人々の状況に共感し、デザインプロセスに没入していくという参加型空間になっています。アーティストやデザイナーが作り上げた「完成品」を陳列するのではなく、それ自体がストーリーテリングになっているという、自分でもどこかで一度やってみたいと思うような、面白い展示でした。